ぱいたんイズム

ゆるりと綴る、意識低い系ゲームプランナーの日常雑記。

ゲームの「パッチ」について、ゲーム開発者の観点から思うこと


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パッチについて語りたい

ゲームを作るお仕事をしていると、いちゲームファンとして今までゲームに関わっていた時には見えてこなかった業界の裏側に触れる機会が多くあります。


想像通りだったこと、意外だったこと、想像以上だったことなどなど・・・。
良くも悪くもゲーム業界の真相に触れることで、考えを改めさせられる場面に出くわします。


そこで今回は、ゲーム業界にあふれている「パッチ」という文化について、いちゲームユーザーとして思っていること、そしてゲーム開発者となった今だからこそ思うことをまとめます。

少々長くなりますが、お付き合いいただけますと幸いです。

そもそもパッチとはなんぞや

1983年に発売されたファミリーコンピュータの爆発的ブームから現在に至るまで、大きく進化を遂げたゲーム業界。

ゲームハードの進化とともに、ゲームソフトのボリューム(と開発費)も膨れ上がっていき、さらに画期的なシステムが登場。

そう、それこそ「パッチ」である。



パッチとは、発売後のゲーム内容を拡張、またはバグを修正するために配信される追加データのこと。

前者は「アップデートファイル」、後者は「修正パッチ」という呼称だったりするが、この記事では総称としてパッチと呼ぶことにします。



さて、このパッチ。

皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

追加課金のDLCは悪なのか?

近年、ダウンロードコンテンツ(追加配信コンテンツ。以下、DLC)で内容を拡張できるゲームが一般化しているため、ユーザーが必要に応じてキャラ・コスチューム・ストーリーなどを開放しながら遊ぶことも増えてきました。


ただ、DLCやパッチという文化が生まれる前はゲームソフトの中にすべてのデータが詰め込まれた完全な状態で販売されていたことから、

「最初から完全な形で売れよ!あとから課金させるな!」

とか

「開発が間に合わなかったからって、あとから対応すればいいなんて怠慢だ!」

という声があるのも事実。


ユーザー目線でいけば、そりゃ最初から完全なものを購入したいですよね。

当然です。


ただ、このDLCに関する2つの不満、それぞれ似て非なる、別のものを対象とした不満であると思っています。

①「最初から完全な形で売れよ!あとから課金させるな!」

まず前者は、キャラのコスチュームや追加ストーリー、お助けアイテムなどの要素を課金でアンロックするタイプのDLCに対する不満です。

このパターンの場合、ゲームの発売時点でソフト内に全ての要素(データ)が実装されていて、ユーザーはそこにアクセスするための権利を課金によって得る、ということになります。


このタイプのDLCは、さらに重要度で大きく分けると、以下のように分類できます。

①-A 無くてもいいもの

アンロックタイプのDLCですが、大抵はキャラのコスチュームなど「無くてもゲームプレイ自体には影響がないもの」がDLCとして配信されていて、ユーザーの好みに応じて欲しい人だけ買えばいいじゃん、という流れが出来上がっています。

ほんのオマケ要素として楽しめる+αのコンテンツなので、欲しい人だけが購入することで自己満足を得られたり、そのゲームに対する熱意を他ユーザーに表現できたり、好きなゲーム会社へのお布施感覚で少額課金できたりします。

たとえば格闘ゲームのキャラコスチュームなんて全部集めても結局は気に入ったやつしか使わないのに、絶妙にコレクター魂をくすぐってきたりします。

自制できれば1円たりとも追加課金せず楽しめるわけですが、キャラ愛を燃やしている人は全部集めたくなっちゃいますよね。

これは、AKBの握手券だったり人気投票だったりと似たような香りがします。


中にはDLCありきで作られていて、DLCを購入しないとまともに面白さを享受できないようなゲームもあったりしますが、基本的には、
「デフォルトのコスチュームでも全然楽しめるよね。でも欲しくなるよね、わかるわかる。」
ってな感じで、個人的にそこまで気になりません。

※某アイドル育成ゲームぐらい重課金が問題になってくると、さすがに課金がユーザー側の判断に任されているとはいえ、ゲーム側でも何かしら対策してあげなくちゃまずいのではと個人的には思ったりしますがそれはまた別の話ということで・・・。

①-B 無くてはならないもの

上で書いたとおり、アンロックタイプのDLCとして販売されているコンテンツは「無くてもいいもの」が主流です。

ですが、ゲームによっては追加エピソードや追加ステージなどが課金でアンロックされるものも存在します。

これらはコスチュームと違って「すべてのユーザーが享受できるべき要素」だと僕は思っています。

なぜなら、追加エピソードや新ステージは直接的にゲーム体験に影響する要素だからです。



たとえば、RPGでクリア後に遊べるようになる「勇者たちのその後」みたいな追加エピソードがあって、これが課金でアンロックされるとします。

特にRPGはキャラクターへの感情移入がゲームそのものの魅力に直結しやすく、ゲームを楽しんでいるユーザーはその世界に没入しきっているはずです。

キャラクターたちが生きている世界や、彼らの人生を追体験するゲームにおいて、何気ない村人との会話や、取るに足らないザコ1匹との戦闘にいたるまで、そのすべてがユーザーの感情移入に必要な要素であり、キャラクターの人生を感じ取るために無くてはならない情報です。

キャラクターたちと冒険し、ともに苦しみ、ともに戦ったユーザー。

そんな思い出を重ねてきたユーザーに向けて、
「課金した人だけが、彼らとさらなる冒険に出ることができます」
というのは、あまりに残酷で、そして興覚めする展開だとは思いませんか。


ユーザーの素晴らしい体験や感動を尊重できず、それをないがしろにするリスクを負ってまで追加課金を促す。

キャラクターとの冒険をもっと楽しみたいユーザーの足元を見ているのではなく、心からゲームを愛してくれたユーザーをバカにしている!

もちろん開発側もボランティアでゲームを作っているわけではないので、運営上の都合や、その他もろもろのアレコレが絡んだ結果なのは重々承知の上ですが、これに関してはいちユーザーとして、非常に腹立たしい課金方法だと思っています。



・・・と、まぁ思わず熱くなってしまいましたが、こういう形のDLCは開発側としても本意ではないのかもしれません。

「叩かれるのも覚悟のうえ」の判断の裏には、きっと何か壮大な思惑があるに違いない。(適当)


②「開発が間に合わなかったからって、後から対応すればいいなんて怠慢だ!」

さて、ここまでは
「最初から実装済みの要素を課金でアンロックするパターン」
に対する意見について書きました。


対してこちらは、
「発売時点では実装されていなかった要素を、あとから配信して追加するパターン」
に対する意見についてです。

今回の記事の本題は、こちらです。
大変お待たせしました。


さて、このパターンも大きく2つに分けられます。

ひとつは、バグを修正するデータを配信するもの。

もうひとつは、モードや機能を追加するためのデータを配信するものです。

②-A バグを修正するためのもの

これは一般的に「修正パッチ」と呼ばれるもので、開発側が想定していなかった手順でユーザーがプレイした、あるいはデバッグが不十分だったことなどが原因で、発売後にバグが発覚した場合に配信されます。

スマホゲームの更新履歴とかでよくある、「軽微なバグを修正しました」みたいなやつですね。


本当に「軽微」だったり、開発側しか気づかないようなバグならまだマシです。

この情報化社会、誰が見ても明らかな重篤バグが発覚した場合には、SNSやブログなどで一気に情報が出回ります。


アクションゲームでキャラが消えたり、格闘ゲームで永久にコンボがつながり続けたり、RPGでイベントが発生せず進行不能になったりする、そんな感じのアレです。

超ヤバいやつです。



我々開発側としては、開発したゲームが発売されると解放感と安堵とワクワクで気分がハイになってたりするわけです。


しかし、テンション爆上げ状態で嬉々としてゲームタイトルのエゴサーチをしているときに

「今日発売の●●っていうゲーム、▲▲で■■するとバグって進めなくなるwww マジでクソゲーなんだけどwwww」

みたいなツイート等を発見した日には、顔の全神経が滅亡したような表情になります。

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顔面蒼白、冷や汗が止まりません。


バグ発見ツイートの目撃者から開発陣一同へ情報が共有され、みんなでひとしきり落ち込んだ後、原因の特定&修正パッチ作りに着手します。


任天堂やらソニーやらへの申請もやり直しになるので、申請用の手続きも並行して進めます。


ホームページで発表するために、お詫び&更新のお知らせも準備します。


他にバグが残っていないか、改めて気になるところをデバッグします。


社内騒然の中、的確かつ迅速に、そして再度ミスを残さないように対応を進めます。



「バグ残したまま発売すんじゃねーよ」

バグは取り切ったつもりでしたゴメンナサイ。
皆さんに楽しんでもらえることを願って世に送り出しています。

いやもうほんと、デバッグに時間とお金かけるの大事ですよねマジで。


「これじゃ有料デバッグじゃねーか」

そんなつもりは一切なかったけど、結果的にはそうなりましたゴメンナサイ。

でも、めちゃくちゃ助かってます。
情報ありがとうございます。
バグ発見ツイートにスクショもあるとさらにありがたい。
個人的には金一封ぐらい差し上げたい。


というわけで、修正パッチに関しては開発側も予期せぬ場合が多くてめちゃくちゃ焦りますが、なるべく早く正常に楽しんでもらえるよう必死に修正対応を進めるわけです。

そして次は、要素を追加するためのパッチのお話。

②-B モードや機能を追加するためのもの

これは、発売してから通信機能が追加されたり、キャラが追加されたりするタイプのアップデートです。

たとえばWiiUの大ヒット作「スプラトゥーン」では、新しいブキやステージが次々に追加されていきました。

WiiU/3DSの「大乱闘スマッシュブラザーズ」も新キャラが追加されていきますよね。

まさにアレです。

※純粋な追加アップデートのほかに、最初から実装されていた要素を順次解禁していくタイプのアップデートも、課金開放ではなく全員が無料で享受できるのでこっちのパターンに含めています。


パッチについて思うこと

前述の修正パッチとあわせて、これらは基本的にユーザーにとって良いことです。

なぜなら、バグが直ったり、遊びの幅が広がったりするからです。

しかも無料です。


繰り返します。

無料です。


無料、いいですよね。


というわけで基本的には良いことづくめですが、表面的には見えにくいデメリットもあるんです。

いちユーザーとして遊んでいた時は気にしていなかったのですが、いざ開発側として考えたときにいくつかの問題が見えてきたのです。

ここでパッチのメリット、デメリットをご紹介しましょう。

パッチのメリット/デメリット
  • メリット
    • ゲームのバグが直る
    • 遊びの幅が増える
    • つまり無料でゲームが改良される

さきほど書いたとおり、ゲームが無料で改良されます。
多くのゲーム会社が長くゲームを楽しんでもらえるよう大小さまざまなアップデートを行っており、ユーザーはゲーム購入後も次々に新しい遊びを享受できる世の中になっています。

ですが・・・

  • デメリット
    • ネット環境が必須
    • HDDやSDカードの容量を圧迫する
    • 最新パッチをあてないと遊べない場合がある

パッチを入手するには、ネット環境が欠かせません。
今では多くの家庭でスマホやPC用としてネット環境が用意されていますが、ネット環境の無い家庭や、ネットの繋ぎ方&パッチの入手方法がわからない子供などにはパッチが行き届かない場合も少なからずあると思います。

つまり、すべてのユーザーがメリットを享受できない可能性があるということです。


また、当然ながらパッチをダウンロードするためにはHDDやSDカードに空きが必要になります。

パッチ自体のサイズはそこまで大きくありませんが、塵も積もればなんとやら。
空き容量がないユーザーは容量を確保する手間が強いられますし、これも小さな子供には難しかったりします。

極め付けが、通信機能の付いたゲームにありがちな
「通信機能を利用するには、ゲームを最新状態にする必要がある」
とか、
「新しいアップデートがあります。ゲームを始めるには、ネットワークに繋いでソフトを更新してください」
とかいう展開。

パッチを更新しないと、ゲームの一部、または全部が遊べなくなるのです。

これにより、
「バグは気になるけど、更新できない人は別に更新しなくてもよくね?」
というパターンも封じられます。

たとえばカードゲームであれば、最新カードのデータが存在するデータと存在しないデータでは対戦ができません。

なぜなら、相手が使ってきたカードの効果が実装されていない状態のデータでは、正しく処理ができないからです。
(課金でアンロックするタイプのゲームなら、自分は入手できないカードもデータ自体は実装されているので対戦できますが。)


つまり、パッチによってバグを直したり遊びの幅を広げようとした結果、
「何かしらの理由によりパッチをダウンロードできないユーザーは、遊びの幅を削られる可能性がある」
というのが、パッチのデメリットの最たるものだと思っています。

開発者の思い

パッチで追加される機能は、はじめから発売日以降に順次開放していくことが運営計画に含まれている機能と、残念ながら発売日までに開発が間に合わなかった機能の2つに分かれます。

計画的に解放される機能は、最初は情報量を抑えて遊びやすくする狙いがあったり、ゲームを長く楽しんでもらえるようにもったいぶってしっかりと考えられたパッチ配信です。

「待望の大型アップデート決定! 新機能●●が追加されるぞ!!」
なんて発表を見ると、ワクワクしちゃいますよね。

これに関しては僕自身もいちユーザーとして、開発側の思惑にうまく乗せられて、楽しませてもらっているなぁと思います。



そして残念なほうの機能追加に関しては、読んで字のごとく、残念なやつです。

発売後に機能追加するパターンの他にも、類似品として「さらなるクオリティアップのための発売延期」で無理やり間に合ったことにするパターンも少なからず存在するはずです。

この発売後の機能追加、じつは僕が開発にかかわったゲームでも経験しました。


大人の事情により発売日をずらすことができないスケジュールの中で、一部機能にどうしても取り切れないバグがあり、「機能を封印して発売する」という展開になったのです。

つまり、その機能は「なかったこと」になって発売されたわけですね。

※「なかったこと」にするため、その機能にアクセスするためのUIや関連テキストを大急ぎで修正することになったのは苦い思い出。

ただ、「封印した機能が実装されれば間違いなく面白くなる」「どうしても実装したい」という開発陣の思いが実を結び、追加機能としてパッチが配信されることになりました。


事実、そのアップデートでゲームはさらに面白くなりました。

ただ、表向きは「神アップデート」かもしれませんが、実際はただの「遅刻」なんです。

おそらく・・・というかほぼ間違いなく、ユーザー側も遅刻に気付いているはずです。

多くのゲームで「遅刻」が発生するこのご時世、(我々としては情けないことに)ユーザー側もそれを受け入れてくれる環境があるのはありがたい限り・・・。



僕の思い出を美化するわけではないですが、開発側が「少しでもいいゲーム体験をユーザーに届けたい!」という一心で辛く苦しい開発をやり遂げるさまを間近で(というか当事者として)見届けたことで、これまでユーザーとして遊んでいたころの思いに少し変化がありました。



単純にサボってたから間に合わないわけではなく、睡眠時間や休日を削ってまで必死に頑張り続けたとしても、いろんな事情で「遅刻」は発生するものだということ。


「遅刻することは業界あるあるだから」と開き直っているのではなく、開発側も遅刻を必死に回避しようとして、もし遅刻する場合も「最良の遅刻の仕方」を考え抜いていること。


ゲーム開発者は、ちゃんとユーザーに楽しんでもらいたくて、日夜頑張っていること。


などなどを知ってから、いちユーザーとして遊んでいるゲームで機能追加パッチが配信されたとき、その裏側にいる多くの開発者の激闘に思いを馳せるようになりました。

開発の遅刻を寛容に受け入れる風潮を助長するわけではないですが、何事も理由ってあるんだなと思いました。(小並感)




あ、バグ修正パッチに関しては開発側も予期せぬ(と信じたい)バグへの対応なので単純にカッコ悪いやつです。
反省するしかない。

今回のまとめ

いろいろと思いの丈を綴ってまとまりのない文章になっている気もしますが、いかがだったでしょうか。

要点だけ書こうと思っていたら、ついつい熱が入ってめっちゃ書きました。

配信されたパッチの裏側を想像する遊び、オススメです。


課金方式のDLCに関しては、ユーザー側と開発側の節度やモラルがしっかりしていれば問題ないと思います。

無料パッチによる機能追加やバグ修正に関しては、計画的なものは開発側の意図を感じながら楽しむのがいいと思います。

計画的じゃなさそうなものは・・・いろいろと察してあげてほしいですが、たまにはネットで叩いてみるのもいいかもしれません。


ただ、とりあえず開発側はサボってパッチに頼っているわけではないということ、頭の片隅に置いておいてもらえると嬉しいです。


パッチには、「より良いゲームにしたい、より快適にゲームを楽しんでほしい」という開発者の願いが込められています。

必死に頑張ったが間に合わず、だけど良いものを届けたくて必死にパッチを作ってる人がいる・・・という現実を知っていただきたい。

この記事を読んでくれた人のうちの一人にでもそれが伝われば、ゲームの " 中の人 " として最高に嬉しいです。


パッチのダウンロードには、面倒なひと手間がかかります。

ただ、そのパッチを作るため、開発者はめちゃくちゃ過酷な戦いに挑んでいます。


ユーザーのため、より面白いゲーム体験を提供したい!


そんな開発者たちの熱い思いがこもったパッチ。
ちょっと面倒だけど、どうかダウンロードしてやってほしいと思います。